2017年2月24日金曜日

<What’s New 預貯金の遺産分割> 


20161219日に今後の相続に影響を及ぼす最高裁大法廷の決定がありました。

これまで、預貯金については、法定相続分に従って自動的に按分されるとされていました。

父が亡くなり、相続人は長男と次男であった場合で考えます。

父が亡くなった時の預貯金が3,000万円であれば、生前の預貯金の贈与に関係なく、法定相続分通り自動的に按分するので、長男1,500万円、次男1,500万円という按分でした。

しかし、今回の最高裁の決定で、生前の預貯金の贈与の取扱いが変更され、生前贈与された預貯金についても按分の際に考慮されることになりました。

これに基づいて、父が亡くなった時の預貯金が3,000万円、生前に長男に1,000万円の預貯金を贈与していた場合を考えます。

遺産総額は、

3,000万円 + 1,000万円 = 4,000万円 と考えます。

よって、長男の取り分は、

4,000万円 × 1/2  = 2,000万円

これから生前贈与1,000万円を引くので、

2,000万円 - 1,000万円 = 1,000万円

この1,000万円が相続時の長男の取り分になります。

一方の次男は、

4,000万円 × 1/2  = 2,000万円

次男は生前贈与を受けていないので、この2,000万円が相続時の取り分になります。

つまり、生前に預貯金の贈与を受けた相続人がいる場合には、その預貯金の贈与についても考慮して預貯金の按分をする必要があるというのが今回の最高裁の決定の主旨です。

2017年2月13日月曜日

<相続税にも障害者控除があります> 

相続税では、相続人のなかに障害者がいる場合には、障害者控除があります。

障害者控除は以下の算式によって計算します。

一般障害者の場合  (85歳  相続開始時の年齢) × 10万円

特別障害者の場合  (85歳  相続開始時の年齢) × 20万円

例えば、相続開始時の年齢が20歳の特別障害者の障害者控除額の計算は、以下のようになります。

85歳 – 20歳) × 20万円 = 1,300万円

この場合の注意点としては、障害者控除額でその障害者の相続税額から引ききれない控除額がある場合には、その引ききれない控除額を、その障害者を扶養する人の相続税額から引くことが出来るという点です。

具体的には、障害者の相続税が500万円で障害者控除額が1,300万円であった場合には、障害者の相続税は、0円となり、障害者控除のうち引ききれなかった800万円は、その障害者を扶養する人の相続税額から引くことが出来ます。

2017年2月1日水曜日

<年金受給者の死亡後に支払われる年金は誰のもの?> 

厚生年金や国民年金は2ヶ月に一度、後払いで偶数月の15日に支給されます。例えば、2月分と3月分は415日に、4月分と5月分は615日に支払われることになっています。

では、年金受給者が47日に死亡した場合には、どうなるでしょうか?

2月分と3月分が415日に支給されることが前提ですが、その段階でその年金受給者は存在しません。ですから、遺族がその未支給年金を請求することになります。

ちなみに、47日に死亡していたとしても、4月分も全額請求出来ます。

この2月、3月、4月分の未支給年金は相続税の対象になるでしょうか?

未支給年金の取扱いについては、平成7117日に最高裁判決が出ております。

この判決によると、「未支給年金は遺族の生活保障を目的とした立場から、死亡した受給権者の相続税の課税対象とはならず、遺族の固有の権利として請求出来る」とされております。

また、所得税法基本通達34-2では、「死亡した者に係る公的年金等で、その死亡後に支給期の到来するものは、その支払を受ける遺族の一時所得に該当する」とされております。

一時所得は、(総収入金額 - 支出した金額 – 50万円) × 1/2  と計算するので、他の一時所得がなければ50万円以下の年金については課税ないことになります。