2016年12月26日月曜日

<税務調査の後に修正申告書を提出しなかったら、どうなるの?>


税務調査があると、申告是認といって何一つ問題がない場合にはそれで全て終了です。
しかし、税務調査があった際の申告是認はかなり少ない割合になっており、多くの場合は修正申告書を提出することになります。
では、修正申告書を提出しなかったら、どうなるのでしょうか?
国税通則法の第24条には、次のように書かれております。
「税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する」
つまり、修正申告書を提出しない場合には、税務署側から更正処分をすることになります。
更正処分と聞くと、何か怖いようなイメージを持つかも知れません。
しかし、指摘事項に従って修正申告書を提出する方が怖い可能性もあります。
なぜなら、一度修正申告書を提出するとそれによって税額が確定してしまい、その後やっぱり指摘事項はおかしいなとなった時に税務署と争うことは出来なくなるからです。
一方、税務署側から更正処分をされた場合には、その更正処分について不服申立をすることが出来ますし、さらに納得がいかない場合には裁判で争うことも出来ます。
注意してほしいのは、税務調査があったら、修正申告書を提出しないで、必ず更正処分を受けるべきだというわけではなく、仮に更正処分をされたとしても、不服申立制度があることを知っていれば、税務署と落ち着いて交渉をすることが出来るということです。
調査官の立場で考えると、早く調査を終わらせたいという思いが強いので、修正申告を進めてきます。
なぜなら、更正処分は税務署が一方的に決めることになるので、後々納税者とトラブルや裁判になったりする可能性があるからです。
だから、修正申告書を提出して下さいと言われて、すぐに修正申告書を提出するのではなく、納得がいかない部分については、しっかりと税法に従って主張し、納得できなければ更正処分でも構いませんという立場を明確にすることで初めて税務署と対等に交渉することが出来ると言えます。

2016年12月21日水曜日

<代償分割をした場合の注意点> 


代償分割とは、相続人の1人又は数人が不動産等の相続財産を取得し、その取得した相続人が他の相続人に対して現金等を払うことを言います。
例えば、父が死亡し、相続税評価額が3,000万円の土地を妻が取得し、妻から長男と次男に500万円ずつその代償として現金を支払ったとします。
この場合、土地を取得した妻の課税価格は、
3,000万円 - (500万円 + 500万円) = 2,000万円
現金を取得した長男と次男の課税価格はそれぞれ
500万円
となります。
ただし、代償分割をする場合には、遺産分割協議書にその旨の記載がない場合には、贈与として認定され、贈与税が課税されてしまう可能性があるので注意が必要です。
なお、遺産分割には、代償分割の他に現物分割、換価分割等があります。
現物分割は、それぞれの資産を相続人が個別に相続する方法をいいます。例えば、自宅及びその土地は妻が相続、賃貸駐車場は長男が相続、預貯金は次男が相続するような分割を言います。一つの土地を分割する場合も現物分割に当たります。
換価分割は、不動産等の資産を売却し、現金化したうえで、その現金を分割して相続人が相続する方法を言います。

2016年12月13日火曜日

<議決権割合によって株主の権利はどうなるの?>


会社をつくる際には、名称、本店所在地、決算月等、たくさん決めることがあります。
その際に、特に気をつけて頂きたいのが、資本金の出資割合です。
資本金の額をいくらにするというより、誰がいくら資本金を負担するか、議決権割合をどうするかということが非常に重要です。
議決権割合は過半数ないとダメだとか、3分の2超ないとダメだとかと聞いたことはあるかも知れません。
しかし、議決権割合がどれだけあれば、どのような権利があるのかまで知っている人は少ないように思われます。
そこで、具体的に議決権をどれだけ持っていれば、どのような権利があるのかを見ていきたいと思います。

3分の2以上 → 合併・会社分割、事業譲渡、定款の変更、監査役の解任等の特別決議
50%超 → 取締役の選任・解任、監査役の選任、取締役・監査役の報酬、計算書類の承認等の普通決議
3分の1超 → 特別決議の阻止(拒否権)
10%以上 → 解散請求権
3%以上 → 株主総会の招集請求権、帳簿閲覧権
1%以上 → 株主提案権

例えば、上記のようなことを知らず、会社をつくる際に仲の良い友人に資本金の50%を出資してもらったとします。
その後、時間が経過し、何らかの事情でその友人との人間関係がこじれることもあります。
そうなると、自分自身の役員報酬を変更しようとしたとしても、取締役の報酬の決議には50%超の議決権が必要ですので、自分で自分の役員報酬を決めることが出来なくなります。
同様に、その友人を取締役から外そうとしても、取締役の解任にも50%超の議決権が必要ですので、自分の意思だけで友人を取締役から外すことも出来なくなります。
ですから、会社を設立する時にこそ議決権割合と、その権利をしっかりと理解して資本金の負担割合を決める必要があります。

2016年12月5日月曜日

<消費者向け電気通信利用役務の提供>

前回は、事業者向け電気通信利用役務の提供について見ましたが、今回は事業者向けでなく、消費者向けのものについて見てみます。
消費者向け電気通信利用役務の提供については、
「国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち事業者向け電気通信利用役務の提供以外のものについて、国外事業者に申告納税方式を課す方式」
と国税庁のHPでは説明されております。
前回同様、「電気通信利用役務」を仮に「ITサービス」と読み替え、具体例を挙げて考えてみます。
amazonに出店したB社があります。
これを、冒頭の文章に当てはめて読み直すと、
amazonが行う消費者向けITサービスの提供については、amazonが申告納税を行う」
と言うことになります。
また、国税庁のHPでは、以下のような説明もあります。
「国内事業者が国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を行けた場合、当分の間、当該役務の提供に係る仕入税額控除を制限する」
これについても、分かりやすく読み直すと、
B社がamazonから消費者向けITサービスの提供を受けた場合、当分の間、そのITサービスの提供については仕入税額控除が制限される」と言うことになります。
つまり、B社は消費税を払っているのに仕入税額控除を受けることが出来ないということになってしまいます。
ただし、ITサービスの提供を行った国外事業者が、国税庁長官の登録を受けた「登録国外事業者」である場合は、仕入税額控除を行うことが出来ます。
この登録国外事業者にはどのような事業者があるかは、国税庁より「登録国外事業者名簿」が公表されています。
ですから、この名簿を参照すれば、取引をしている会社が登録国外事業者に該当するかどうかが分かります。
直近では、平成28721日現在のものが公表されています。
具体的な企業名を挙げると、
amazonGoogle、ドロップボックス、アドビシステムズ等、馴染みのある企業名が列挙されております。
つまり、これらの企業からの消費者向けのITサービスの提供であれば、仕入税額控除を受けることが出来るということになります。